2023年6月14日〜16日にドイツのベルリンで開催された「Global DIY Summit 2023」に弊社社長の柳瀬が登壇しました。
Global DIY Summitは、世界各国のホームセンター業界に携わる小売業とメーカーの担当者が参加し、意見交換やネットワークの拡大に寄与するイベントです。
第9回目となった今回は、55ヶ国から1000人以上の参加者が集い、3日間にわたって開催されております。
このイベントにおいて、柳瀬が自社の取り組みについて紹介する講演を英語で実施しました。
今回はその模様をお届けいたします。
【講演内容】
~グッデイの紹介~
株式会社グッデイは北部九州を中心に63店舗を構えるホームセンター「GooDay」を運営する企業で、現社長の柳瀬が当時2歳だった1978年に、柳瀬の祖父が創業し、2022年度の売上は約280万ドル(日本円で約390億円)、従業員数は約1550人、経営理念は「家族でつくるいい一日」(Making a “Good Day” with family)で、グッデイの社名は”Good”と”Day”からの造語となっております。
~入社当時の状況~
2008年の入社当時、社内は非常に古いオペレーションのまま運用されており、お客様から商品の在庫を確認するよう依頼を受けると、スタッフが確認のため倉庫に走り、バックヤードに1台しかないパソコンを使って情報を検索していました。また、業務システムは非常に重く使いづらいもので、お客様をお待たせしてしまうことにもつながっていました。
又、あらゆる資料は紙で印刷され、例えば毎月の会議資料は100枚単位で印刷されていました。100人の参加者がいれば1万枚の紙が使われることになり、紙の無駄がかさんでいました。さらに、会社の公式ホームページも従業員用のメールもない状況で、スケジュール管理はノートかホワイトボードを用いるなど、アナログな仕組みで業務が回っていました。
この状況を改善すべく、3つのキーポイントに着手しました。
3つのキーポイント
1.Google Workspaceの導入
Google WorkspaceとはGoogleが開発したグループウェアのことです。
グッデイでは2015年にGoogle Workspaceを導入し、社内のコミュニケーションをGoogle Workspaceに切り替えました。この結果資料をクラウド上で管理し、データで共有したりすることで、今までの様に印刷することを防止し、ペーパーレス化に成功しました。
また、オンラインの会議ツールであるGoogle Meetも積極活用しました。例えば、地域の複数店舗を統括するエリアマネージャーは、自分の担当エリアでトラブルが発生した際にオンラインの会議ツールであるGoogle Meetを使うことで、現場と異なる場所にいても店舗の状況を知ることができる様になりました。そして、Google Meetの活用が浸透していたため、コロナ禍のリモートワークにもスムーズに対応することができました。
社内の文書についてはGoogleドキュメント、スプレッドシート、スライドで管理・共有しています。共有ドライブに保管することで、社内の誰もが情報を確認できる状況が出来上がり、データへのアクセスや共有が容易になりました。この結果、業務の負担が大きく軽減されています。
従業員からは「導入前はどうやって仕事していたかわからなくなった」という声が上がるほど、Google Workspaceの導入は大きな変革をもたらしました。
2.クラウドベースのデータ分析
当時のグッデイでは、データはあるけれど活用できていない状況でした。そこで、社内にある大量のデータをクラウド上のデータベースにアップロードし、Tableauを繋いでデータ分析を行う仕組みを採用しました。データベースとして用いたのはGoogleのデータウェアハウス(DWH)である「Google Big Query」で、大量のデータをハイスピードで処理できるのが大きな特徴です。
グッデイでは、数十テラバイトものデータをDWHに保管し、SQLとTableauでデータ分析処理を行っています。最も大きいデータベース上のテーブルには250ギガバイトのデータが入っていますが、ほんの数秒でリターンが来るほど速いスピードで処理ができます。
グッデイのデータ分析基盤の仕組みですが、社内にある基幹システムや会計システム等、様々な業務システムのデータを「Google Big Query」に自動連携し、一元管理しています。こうすることで、分析の都度、個別のシステムにデータを取りに行く作業がなくなり、手間が大きく省かれました。
又、多くの企業ではシステム部等の一部の従業員がデータ分析ツールを用いてダッシュボード画面を構築している例を耳にしますが、「グッデイ」ではライセンスを保有している各従業員が、それぞれの権限に応じて「Google Big Query」にアクセスして、Tableauを用いた分析を行っています。
この様にグッデイでは従業員自らデータを利活用しているのですが、これを可能にしたのが、社員教育の取り組み、名付けて「Gooday Data Academy」でした。
この様な「グッデイ」の取組みに興味を持った多くの企業の方から問合せを受けるようになった結果、各地での講演会に呼ばれる機会も増加しました。
そして、2017年にこのグッデイにおける取り組みを外販するビジネスを担う「カホエンタープライズ」という企業を新たに設立しました。
カホエンタープライズの主な事業は、データ活用に関してクラウドベースのデータベースの構築から、Tableauを用いたデータ活用、Google Workspaceの活用支援等のコンサルティングサービスです。
3.Gooday Data Academy
柳瀬自身、かねてからデータサイエンスやAIに興味があり、自身で勉強するなどして小売業にデータサイエンスを活かす術を模索していました。学習を続ける中で、データを活用する術・スキルを身につけることは小売業に非常に役立つものだと感じていました。
「社内にデータを扱うスキルを持った従業員がいなければ意味がない」
「大事なのは従業員がデータの扱い方やデータドリブン経営について理解すること」
であると考えた柳瀬は、社内でデータサイエンスを学ぶためのプログラムとして「Gooday Data Academy」を創設しました。Gooday Data Academyで取り扱うのは、統計学の基礎からTableauの操作方法、さらには基礎的なPythonのプログラミングまで多岐にわたり、毎年10〜20名の従業員が参加します。研修のゴールは、従業員が学んだことを各部署に持ち帰ってオペレーションの改善に活かすことです。エンジニアはデータやプログラミングのスキルを持っていますが、接客や商品の販売に関する知識は有していません。店舗スタッフとの議論を深めることにより、小売業の実務に役立つデータ分析を目指しています。
~今後の展望~
通話アプリ「LINE」のミニアプリを自社で開発し、現在38万人の登録者を獲得しています。ミニアプリで収集したデータはCRMに活用していこうとしております。また、お客様から売場で商品の場所を訊かれた際に簡単に調べられるように、商品の音声検索システムも自社で開発しました。
今日お話したことは、グッデイがやろうとしてることのほんの始まりの部分に過ぎません。データドリブン経営は、データを通してのコミュニケーションとチャレンジ精神を生み出します。日々店舗では多くの業務がありますが、週ごと・月ごとの売上分析にTableauのダッシュボードを活用し、商品情報はタブレットを使用してチェックするなど、ITの活用を更に推し進めています。さらに、店長が需要予測を元に売場のスタッフに指示を出す取り組みも始まっています。
学び成長し続ければ、従業員にもお客様にもより役に立つ仕事ができるようになると、私は信じています。お客様の日々の暮らしをより良い一日にできるように、私たちはこれからも全力を尽くしていきます。ご清聴ありがとうございました。
講演は全編英語で行われました。スライドの写真を撮ったりしながら真剣に聴いてくださる海外の方の様子が見受けられ、しっかりと思いが伝わっていると感じました。また、このイベントに参加したことで、グッデイの今後の取り組みやビジネスに関する気づきもあったとのことです。グッデイの取り組みがワールドワイドに広がっていくことを願いたいと思います。
<問い合わせ先>
株式会社カホエンタープライズ
担当者:湯野 礼之輔(ゆの れいのすけ)
Mail:sales@kaho-enterprise.co.jp
TEL:070-8814-5939