2023年6月7日(水)開催のオンライセミナー「グッデイ、吉野家に訊く「顧客とつながるデジタルコミュニケーション ファン育成の鍵とは」に、弊社社長の柳瀬が登壇致しました。
今回は講演の模様をお伝えいたします。
今回の講演の題目は『ファンを増やす「グッデイ流」デジタル活用術』。
グッデイにおける顧客体験についてどの様に取り組んでいるのか、もしくはデジタルコミュニケーションをどの様に進めているのか、何故グッデイではDX化が進んだのか等、メグリ株式会社田代様からの質問に柳瀬が答える形で進められましたので、今回の本講演で語られた内容について取り上げていきたいと思います。
テーマ1. 顧客体験をどのように考え、取り組みを進めているのか?
柳瀬:
グッデイは少し前まで顧客データは保有しておらず、2015年にデータ分析環境を構築してからはPOSデータをもとにデータ分析しておりました。
(IDが紐付いていない)POSデータの分析となりますので、レシート毎の売上をみて何と何が買われたかの併売結果はわかるものの、顧客毎の購買情報や過去の購買履歴等はわからない状況でした。
その打開策として、最近LINEの会員証サービス(ミニアプリ)を構築しました。
今現在約38万人程の登録者数を獲得しております。
今後はLINEのミニアプリのIDを用いて、顧客の購買情報と購買履歴を紐づけて情報取得しようとしている状況となります。
収集した情報をどの様に活用していくかは現在検討段階となります。
田代様:
活用はこれからという話ですが、今までのPOSデータの分析と違って、顧客IDを紐付けてデータ取得できればどの様なものが見えてくるのでしょうか?
柳瀬:
従来のPOSデータを用いた分析から、「GooDay」のお客様は大きく4つの分類に分かれる、ということは類推できていたので、それらの分析結果については、どういう商品をどこに寄せるのか、といった売り場のレイアウトに活かしていました。
しかし、顧客の購買履歴を紐づけてデータを取得することで、例えば複数の店舗に跨って買い物されている等、お客様の消費行動の理解度・解像度が深まってきましたので、今後はよりお客様のことを把握できるようになると考えております。
田代様:
お客様とのデジタルコミュニケーションはどのように進めているのでしょうか?
柳瀬:
昨年、紙のチラシをほぼ辞めて、浮いた費用をLINE等のデジタルの販促費に充てています。
チラシがどれくらい読まれているかもわからないということもあり、投資対効果の観点とお客様との関係性を継続的に築き上げていく観点でデジタル化を進めていっております。
ペットフードのお買い得情報は過去の履歴から類推してペットのオーナー様だけにプッシュ通知を送るようにしたり、職人さんで木材を買いたい人にはまとめ買いするとお得になるような販促を直接行うなど、1 to 1 マーケティングに近い手法をリアル店舗でもできるようにしたいと考えています。
田代様:
チラシを実際に辞めるという判断は非常に難しいと思います。これができた背景には、分析ができる環境を整えていたことが要因としてあるのでしょうか?
柳瀬:
まず、グッデイでは隔週でチラシを出していたので、チラシを入れた週とそうでない週の比較がもともとデータとして取れていたので、比較がしやすい状況でした。
この差(チラシを入れた週とそうでない週)をチラシの効果として仮定した際に、利益や売上の増加分がコストに見合っているかを計算し、投資するのはどうなのかという判断となりました。
しかし、販促活動はをやらないわけにはいかないので、代替手段として会員数が増加しているLINEのミニアプリを活用しました。
店頭で会員登録を勧めると、お買い得だと感じて登録してくださるお客様も多いという実感があったので、受け皿があったからチラシをやめられたというところも大きかったと思います。
チラシで売上が上がっていれば「やめたら下がる」という議論が成り立ちますが、「もともと上がってないからやめてもいいよね」という話になりました。
田代様:
メーカーとの商談の中で生まれていた販促施策は、デジタルの販促活動にも取り入れられていますか?
柳瀬:
従来の販促をデジタルに置き換える方向で進めています。
LINEによる販促効果であったり、デジタルサイネージで映像を流しながら売場に近いところで販促した方が高い効果を得られることは、数字をもとに示しています。
うまくいくものとそうでないものはありますが、かなりの確率で売上に結びつくことがあるので、デジタルサイネージの放映機関のデータなどもお渡ししながら商談をしています。今まではチラシを撒いたら撒きっぱなしで効果検証ができていなかったので、そのあたりを丁寧にやるようにしています。
田代様:
単純に施策内容が変わっただけでなく、施策を打つまでに関わる人の業務が変わり、かつメーカーにフィードバックできるデータ量が増えているということですね。
柳瀬:
例えば、新商品の感想を得たいと思っても、グループインタビュー等を行うとかなりのコストがかかってしまいます。
LINEを使うとアンケートができますので、これをメーカーにオプションのサービスとして提供しています。
LINEのクーポンを提示して購入されたお客様に追跡アンケートの実施をご提案し、活用していただいています。
田代様:
そうするとやはりメーカーとの関係性も今まで以上に強固になってくるということですね。
柳瀬:
そうですね。作業として売価を安くしようということでチラシを実施していたところから、本当の意味での販促やマーケティングになるデータの使い方を意識して取り組んでいます。
テーマ2. 「顧客とのデジタルコミュニケーション」
田代様:
LINEでの販促以外にこれから挑戦していきたいことはありますか?
柳瀬:
なるべくデジタルの世界でもグッデイの露出を増やしたいと考えています。
例えば、インスタグラムで「#集まれ、うちの子フェア」というタグをつけてペットの動画を投稿してもらった方に、その動画をCMにするというキャンペーンを行いました。
これまでに数回実施しているのですが、回を追うごとにクオリティが上がっています。
最近は犬猫以外の珍しい動物が見られるようになった他、九州以外の方からの投稿も多くなっています。
九州のホームセンターではありますが、知名度をなるべく広げられるようにと思っていますので、実際に店舗に来ていないお客様にグッデイを知っていただくことに効果があるのではないかと思います。
また、投稿されたペットの写真を店頭に掲載しているのですが、店頭に掲示されたポスターを目当てにご来店されてスタッフとコミュニケーションを取られるお客様もいらっしゃいます。
起点はオンラインですが、実際に店舗に足を運んでいただく効果もあると感じています。
田代様:
このような企画は社内でどのようにして生まれてくるのですか?
柳瀬:
マーケティング部長が非常にユニークな人物で、新しいアイデアを積極的に提供してくれます。
彼のアイデアに若手の意見を取り入れながら提案をしてくれます。
マーケティング関係の施策については自身が意見を出すよりも、現場から上がってくるケースが多いと感じます。
田代様
マーケティング施策に関して、ROI(投資収益率)に関する議論はありませんか?
柳瀬:
意識しているところではあります。グッデイの中でペットと園芸のネタは鉄板で、キャンペーン期間中は大きく伸びが見られるので、費用対効果として十分出ていると考えています。
小売業はどうしても商品施策に陥りがちで、「この商品が安いですよ」「こんな新商品が出ましたよ」という売り方になりがちですが、グッデイのようにPB(プライベートブランド)を作っていない会社だと差別化が出来ません。
CMやSNSのコンテンツを用いてやりたいのは「お客様との関係づくり」です。
広報活動を通じて、グッデイのユニークさを訴求していきたいと考えています。
田代様:
商品や品揃えよりも、グッデイというブランドをうまく伝えていきたいということですね。
柳瀬:
全くCMをやったことがないグッデイで、最初にテレビCMを作ったのは私自身でした。
当時、DIYを広めたいと考えていましたが、単に「DIYやりましょう」と発信しても伝わらないし、DIYという言葉自体があまり浸透していませんでした。
そこで「グッデイならできる」というフレーズをつくり、これを音楽にのせたアニメ調のCM放送を始めました。
効果は非常に大きく、CM開始から数週間後には小さなこどもが「グッデイならできる♪」と歌いながらお買い物に来てくれたり、福岡でグッデイの話をすると多くの人がCMソングを口ずさんでくれるなど、非常に浸透しています。このような効果を生むことがCMの大きな効果であると考えています。
費用対効果を見て無駄な施策にならないよう取り組んでいますが、効果を挙げるにはお客様に刺さるネタを投入しないといけませんので、何かしら毛色の違うことをやっていく必要があると考えています。
田代様:
テレビCMやデジタルサイネージ、SNS等、クロスチャネルで取り組まれている印象があります。コミュニケーションに関していろいろなタッチポイントが増えている中で、これからやりたいことや狙っていることはありますか?
柳瀬:
お客様はいろいろな選択肢がある中でグッデイを選んでくれていますが、選ばれることはすごく難しいことだと考えています。
お店を開けているとお客様が入ってきてくれて、前年の数字と同じような売上が記録されるのはすごく不思議だと感じます。
お客様が来てくれるのが当たり前と思ってしまっているのが、小売業がもったいないことをしているところだと思います。
お客様がお店を選んでいる基準の1つに心理的な部分があり、気持ちの揺らぎの中で行くお店を決めていると思っています。
統計的な話にも興味がありますが、一方でお客様との心理的なつながりも非常に重要だと考えています。
田代様:
心理的なつながりを生み出しているポイントとしては何が挙げられますか?
柳瀬:
利便性を考えるとネットで買い物する方が良いのは当たり前になってきています。
ではリアル店舗が何をすべきかというと、まずECと同等のデータ分析能力やデジタルリテラシーが必須だと考えています。
一方で、ECにはできない「リアルな体験」が小売業で今後唯一残っていく部分だと思います。
例えば障子の張り替え方など、動画では伝えきれない細かな部分を教えられるような体験の場をつくっていきたいと考えています。
また、店舗の限られたスペースでは出来ることに限りがあるので、店舗の外でイベントを実施して、お客様に体験してもらうことにも力を入れています。
接客に関する話ですが、以前の業務システムは古い1台のパソコンでしか操作できませんでした。
店頭で在庫状況を訊かれるとバックヤードに走り、端末を使って調べるという状況で、だんだんお客様から話しかけないで欲しいと感じるようになっていました。
古い業務システムの影響で効率が悪く、リアル店舗の良さが消されてしまう状況でした。
昨年から業務システムのWeb化に自社で取り組み、携帯端末で見られるようになっています。
ホームセンターでは商品の場所を訊かれることが接客の5割ほどを占めています。
店頭に音声認識の端末を置いたり、ミニアプリで場所を確認できるようにするなど、利便性向上のためのデジタル化を意識しています。
田代様:
システムを導入することで従業員の接客や心持ちに変化は出ていますか?
柳瀬:
新しい業務システムを導入する前後で従業員の勤務中の歩数を測定したところ、導入後は10%ほど歩数が少なくなっていることがわかりました。
従業員の業務負担の軽減につながっていると感じます。
2015年頃からデータドリブン経営を目指しており、社内にもデータで検証する意識が広がっていると思います。
田代様:
DXを目指してもうまくいかない企業が多いと思うが、デジタルをうまく取り入れて事業をアップデートするためのベースはどのようにして出来上がりましたか?
柳瀬:
グッデイも最初はうまくいかない時期が長くありましたが、2015年にデータ分析環境を構築できたことが転機になりました。
それまではいろんなシステムを導入することに注力していましたが、そうすると作業が煩雑化していました。
また、社内のシステムを改修しようとすると構造的に費用も時間もかかってしまいます。
しかし、2015年に各ツール内のデータを全てDWHに貯めるようにすると、データをインプットする場所・貯める場所・アウトプットする場所が明確化されました。
アウトプットについてはTableauで全て作業できるので、データをDWHに貯めておくだけでいいと考えられるようになりました。
また、グッデイではデータのアウトプットを専門家に依頼せず、店舗に近い社員がスキルを身につけて対応しています。
現場の知識がある従業員がダッシュボードを作成するため、現場にも伝わりやすくなっています。
同じことを言われたとしても、直属の上長から言われるのとシステム部から言われるのとでは、やはり現場の従業員の受け取り方も変わってくると思います。
同じことをやっていても、誰が言うかで大きな違いが出ると感じます。
田代様:
現場の人が使える環境をつくり、それが社内に根付いてデジタル化が進む好循環が生まれているということですね。
柳瀬:
個別の作業は違っていても、大枠としては「DWHにTableauでアクセスして分析する」という手法で変わらないので、シンプルな構造で複雑なことを巻き取れるようになっているのが作業のしやすさにつながっていると考えています。
教育する際にも教えることが少なくて済みます。
田代様:
リテールのみならず、IT企業でも同じように使える話だと感じました。
こうして生まれたデータへの理解や業務時間の削減が、お客様との対話やいろいろな施策を考える時間につながっているということですね。
柳瀬:
日々作業に追われている店舗側から分析の手間を巻き取って、シンプルな仕事をできる制度設計に取り組んでいきたいと考えています。
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「カホエンタープライズ」はグッデイでの経験・ノウハウを基に様々な企業に対しGoogle Workspaceの導入・活用支援を行っております。
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